『約束のネバーランド』序盤で大きな謎の一つとなるのが、GFハウスの中にいるイザベラの内通者です。
エマやノーマンと並ぶ年長者であり、脱獄計画にも加わっていたレイが内通者だったと分かると、「レイは二人を裏切っていたの?」と感じた人も多いのではないでしょうか。
しかし、レイがイザベラへ情報を渡していたのは、単純にママの味方だったからではありません。むしろレイは、イザベラの内通者という立場そのものを、脱獄へ向けた準備に利用していました。
そこにはエマやノーマンよりも早くGFハウスの真実を知っていたレイの孤独や、「全員を救うのは無理だ」と考える現実的な判断も関係しています。
※この記事にはGFハウス脱獄までの重要な内容を含みます。
この記事でわかること
- レイがイザベラの内通者になった理由
- レイは本当にエマとノーマンを裏切っていたのか
- 内通者という立場を使って何を準備していたのか
- レイとイザベラの複雑な関係
- 脱獄計画の中でレイの考えがどう変わったのか
レイはなぜイザベラの内通者になったのか
レイが内通者になった最大の理由は、イザベラに忠誠を誓うためではなく、GFハウスから逃げるための準備を進めるためです。
エマとノーマンがある出来事をきっかけにハウスの真実へたどり着くのに対し、レイはそれよりずっと前から、自分たちが置かれている状況を知っていました。
真実を知っているからといって、子供一人ですぐに外へ逃げられるわけではありません。そこでレイは、敵であるイザベラの近くへ入り込み、その立場を利用する道を選びます。
レイはかなり早い段階からハウスの真実を知っていた
エマとノーマンにとって、GFハウスの正体を知ることは、それまで信じていた日常が一気に崩れる出来事でした。
一方のレイは、幼いころからハウスの裏側を知りながら、それを周囲に明かさず生活しています。
家族として一緒に育ってきた子供たちが、なぜある年齢になるとハウスを離れていくのか。自分たちが何のために育てられているのか。そうした事情を知った状態で、何も知らない子供として振る舞い続けていたことになります。
この時間の長さを考えると、レイがエマとは違う考え方を持つようになった理由も見えてきます。
エマは真実を知ってからも「みんなで逃げたい」と考えますが、レイは長い間、ハウスの仕組みとイザベラの監視を見てきました。そのため、理想だけでは逃げ切れないという意識が強くなっていました。
イザベラの内通者になること自体が脱獄準備の一部だった
レイはイザベラの内通者として、子供たちの動きを報告する立場になります。
表面だけを見ると完全にイザベラ側の人間ですが、レイ自身は脱獄の準備をするために、この立場へ自ら入っています。
つまり、イザベラに情報を渡す代わりに、自分にも利益が返ってくる関係を作ったわけです。
その中でレイは長期間にわたって必要な物を集め、いずれハウスから逃げるための準備を進めていました。
内通者であることと、イザベラの味方であることは同じではありません。ここを分けて考えると、レイの行動はかなり理解しやすくなります。
レイが最優先していたのはエマとノーマンだった
レイが脱獄を考えていた大きな理由には、エマとノーマンの存在があります。
ただし、レイの考える脱獄とエマの考える脱獄には、大きな違いがありました。
エマは小さな子供たちまで含めて、できる限り全員で逃げようとします。一方のレイは、それでは成功率が下がると考え、助ける人数を絞るべきだと判断していました。
冷たく見える考えですが、レイにとっては「誰も助からない」結果を避けるための現実的な選択でした。
特にエマとノーマンを生き延びさせることへの思いは強く、自分自身まで同じように救おうとはしていなかった点が、後の脱獄計画にもつながっていきます。
レイはエマとノーマンを裏切っていたのか
レイがイザベラへ情報を流していたこと自体は事実です。そのため、「裏切っていた」という見方が完全に間違いというわけでもありません。
ただ、レイの目的を最後まで追うと、エマやノーマンを敵として売り渡そうとしていた人物ではないことが分かります。
むしろレイは、イザベラとエマたちの間に立ち、それぞれへ違う情報を見せながら、自分の考える脱獄へ持っていこうとしていました。
ノーマンは情報を使って内通者を絞り込んだ
エマたちの動きがイザベラ側へ漏れていると分かると、ノーマンは誰が情報を渡しているのか探り始めます。
そこで使ったのが、相手によって異なる情報を伝え、どの内容がイザベラへ届くかを見る方法でした。
その結果からノーマンはレイへたどり着き、本人と直接話します。
ここで重要なのは、レイが内通者だと分かったあとも、ノーマンがすぐにレイを排除しなかったことです。
ノーマンはレイの立場を逆に利用し、イザベラへ偽の情報を流す二重スパイとして動かそうとします。
レイとノーマンは互いの思惑を理解しながら協力する
ノーマンから二重スパイになるよう求められたレイは、自分が脱獄準備のために内通者になったことを明かします。
ただし、そこで二人の考えが完全に一致したわけではありません。
レイは全員での脱獄には反対しており、エマを説得するどころか、場合によってはエマを騙してでも助ける人数を絞ろうとします。
ノーマンも、レイがすべてを素直に話しているとは限らないと分かったうえで、その能力と立場を利用します。
レイとノーマンは、お互いが非常に頭の切れる相手だからこそ、完全に信用するだけではなく、相手の狙いまで読んだうえで協力していました。
レイとエマでは「救いたい」の形が違っていた
レイとエマの大きな違いは、誰を助けるかという部分です。
エマは難しいと分かっていても、できるだけ家族全員で逃げようとします。
レイから見れば、その考えはあまりにも危険です。人数が増えれば動きにくくなり、小さな子供を連れてイザベラの監視を突破する難易度も上がります。
そのためレイは、「全員を助けようとして全員が捕まるくらいなら、助けられる人間を確実に助ける」という方向へ傾いていました。
どちらも仲間をどうでもいいと思っているわけではありません。エマは可能性を広げようとし、レイは失敗の可能性を減らそうとする。この違いが二人の考え方を大きく分けています。
レイとイザベラはどんな関係だったのか
レイとイザベラの関係が複雑なのは、内通者と管理者というだけではありません。
作中では、二人が実の親子であることも明らかになります。
しかし、血がつながっているからといって、一般的な親子のように一緒に暮らせる環境ではありません。イザベラはGFハウスを管理する「ママ」であり、レイはそこで育てられている食用児の一人です。
表向きは「ママと子供」、裏では「管理者と内通者」だった
ハウスの中では、イザベラはすべての子供たちから「ママ」と呼ばれています。
レイも表向きは、その中の一人として生活しています。
しかし裏では、イザベラへ情報を渡す内通者として接触し、必要なものを得るという別の関係を持っていました。
イザベラにとってレイは情報源として使える存在であり、レイにとってイザベラは脱獄準備のために利用できる相手でもあります。
親子でありながら、お互いに相手の立場や目的を意識して向き合わなければならないという、非常に特殊な関係です。
イザベラはレイの実の母親だった
物語が進むと、イザベラ自身もかつてGFハウスで育った子供だったことが分かります。
逃げることが難しい世界の中で、イザベラは「ママになる」という道を選び、生き延びてきました。
その過程で生まれた子供がレイです。
つまりレイにとってイザベラは、農園を管理する敵であると同時に実の母親でもあります。
ただし、レイがその事実を知ったからといって、イザベラを母親として頼る方向へ進むわけではありません。
農園の仕組みの中では、親子という血のつながりよりも、「管理する側」と「出荷される側」という立場のほうが強く二人を縛っています。
二人の関係からGFハウスの残酷さが見えてくる
レイとイザベラが実の親子であるという事実は、単なる驚きの設定ではありません。
実の母親であっても、自分の子供を普通の家庭で育てることができない。実の息子であっても、母親を信頼して助けを求めることができない。
それほどまでに、農園という仕組みが人間同士の関係を歪めています。
イザベラ自身も何も知らずに農園へ協力している人物ではなく、その仕組みの中で生き延びる道を選んだ人物です。
だからこそレイとの関係も、単純な「悪い母親とかわいそうな息子」だけでは整理しきれません。
レイの計画はなぜ変わっていったのか
レイは最初から、自分も含めた家族全員で自由になる未来を思い描いていたわけではありません。
むしろ長く現実を見続けてきたからこそ、助けられる人数には限界があり、自分自身まで救う必要はないと考えていました。
しかし、エマやノーマンはその考えをそのまま受け入れません。
ノーマンの出荷で脱獄計画は大きく揺らぐ
レイにとって特に大きな出来事となるのが、ノーマンの出荷です。
エマとレイはそれを阻止しようとしますが、ノーマン自身も脱獄計画を守るために行動し、三人は離れ離れになります。
三人で進めてきた計画からノーマンがいなくなったことで、レイとエマは一度追い詰められたように見えます。
ところが二人は表向きには諦めたように振る舞いながら、それぞれ脱獄の準備を続けていました。
レイは最後に自分自身を犠牲にするつもりだった
レイが考えていた計画の中で重要なのが、自分自身を脱獄後の未来へ含めていなかったことです。
出荷が迫る中、レイは火事を利用してイザベラの目を欺こうとしますが、その計画には自分自身を炎の中へ残すことまで含まれていました。
レイにとって、自分を犠牲にしてエマたちが逃げられるなら、それで目的を果たせるという考えだったのです。
ここを見ると、レイが内通者になった理由が自分だけ生き残るためではなかったことも、よりはっきりします。
むしろレイは長い時間をかけて脱獄の準備を進めながら、最後には自分を切り捨てるつもりでいました。
エマたちはレイ自身も救おうとした
しかし、エマはレイの自己犠牲をそのまま受け入れません。
ノーマンもレイがどのような行動を取るのかを予想しており、その考えはエマへ残されています。
レイの想定とは違い、脱獄は「レイを犠牲にしてほかの子供が逃げる計画」ではなく、レイ自身も一緒に生きて外へ出る計画へ変わります。
ここはレイという人物を見るうえで、とても大きな転換点です。
それまでのレイは「全員を救うことはできない」と考え、必要なら自分自身も切り捨てる側でした。
しかしエマたちは、そのレイまで救う対象から外しませんでした。
レイは裏切り者から仲間へ変わったのではなく、最初から仲間を救おうとしていた。ただし、自分自身も救われていいとは考えていなかったのです。
まとめ
レイがイザベラの内通者だった理由を振り返ると、「仲間を裏切ってママへ協力していた」という単純な構図ではなかったことが分かります。
- レイはかなり早い段階からGFハウスの真実を知っていた
- 脱獄の準備を進めるため、自らイザベラの内通者になった
- イザベラへ情報を渡しながら、その立場を自分の計画にも利用していた
- レイは特にエマとノーマンを生き延びさせようとしていた
- エマとは「どこまでの人数を救うか」という考え方が違っていた
- レイとイザベラは管理者と内通者であると同時に、実の親子でもある
- 脱獄時には、レイ自身を犠牲にするところまで計画していた
- エマたちはレイの自己犠牲を拒み、レイも一緒に脱獄する道を選んだ
レイの内通者という立場は、裏切りの証というよりも、幼いころから一人で続けてきた抵抗の手段でした。
ただ、レイは長く厳しい現実を見すぎたことで、「誰かを助けるためには誰かを諦めなければならない」と考えるようにもなっています。
そんなレイに「お前も一緒に生きる側だ」と示したのが、エマやノーマンでした。内通者だった事実だけではなく、そこから脱獄へ至るまでの変化まで追うと、レイが三人の中で担っていた役割もより分かりやすくなります。
