『鋼の錬金術師』には、ラスト、グラトニー、エンヴィー、グリード、ラース、スロウス、プライドという7人のホムンクルスが登場します。
人間と変わらない姿を持つ者がいる一方で、致命傷と思える攻撃を受けても再生し、それぞれが特殊な能力を持っています。さらに、彼らは謎の存在を「お父様」と呼び、その計画のためにアメストリス各地で動いていました。
では、ホムンクルスとはそもそも何者なのでしょうか。
作中のホムンクルスたちは、「お父様」から生み出され、七つの大罪を表す名を持つ人造人間です。ただし、全員がまったく同じ方法で生まれたわけではなく、キング・ブラッドレイやリン・ヤオの身体を器にしたグリードなど、特殊な例もあります。
そして彼らを理解するには、ホムンクルスだけを見るのではなく、「お父様」の正体や賢者の石との関係まで知る必要があります。
※物語終盤までの内容に触れています。
この記事でわかること
- ホムンクルスとは何者なのか
- 「お父様」とホムンクルスの関係
- 七つの大罪の名前を持つ理由
- ホムンクルスと人間の違い
- ラースやグリードがほかと少し違う理由
鋼の錬金術師のホムンクルスとは何者?
『鋼の錬金術師』でエドたちの前に立ちはだかるホムンクルスは、一般的な人間とは異なる身体と能力を持っています。
序盤では謎の多い敵として登場しますが、物語が進むにつれて、彼らの身体には賢者の石が深く関わっており、その背後に「お父様」と呼ばれる存在がいることが明らかになっていきます。
七つの大罪の名を持つ人造人間
ホムンクルスには、それぞれ七つの大罪に対応した名前が付けられています。
- プライド=傲慢
- グリード=強欲
- ラスト=色欲
- エンヴィー=嫉妬
- グラトニー=暴食
- ラース=憤怒
- スロウス=怠惰
単に七つの名前が割り振られているだけではなく、それぞれの性格や行動にも、その名前につながる特徴が見られます。
たとえばグリードは、金や地位だけではなく、自分が欲しいと思ったものをすべて求めます。エンヴィーは人間を見下しながら、人間同士が築く関係に強く反応します。
七つの大罪の名前そのものが、それぞれのホムンクルスを理解する手掛かりになっています。
ホムンクルスの身体には賢者の石が関わっている
ホムンクルスが人間と大きく違う点の一つが、強い再生能力です。
普通の人間なら動けなくなるほどの傷を負っても、身体を再生して戦い続けることがあります。この力には、体内に持つ賢者の石が関係しています。
しかし、何度傷ついても永久に元へ戻れるわけではありません。再生を繰り返せば、賢者の石に蓄えられた力も消耗していきます。
ロイ・マスタングとラストの戦いでは、その特徴が非常に分かりやすく描かれています。マスタングは一度の攻撃で倒そうとするのではなく、再生が追いつかなくなるまで攻撃を繰り返します。
賢者の石の正体を知るとホムンクルスの見え方も変わる
さらに重要なのが、賢者の石そのものが何から作られているのかという点です。
エドとアルが調査を進めたことで、二人が身体を取り戻すために探していた賢者の石には、人間の命が関わっていることが分かります。
つまり、ホムンクルスの驚異的な生命力も、何もないところから生み出される力ではありません。
ホムンクルスと賢者の石の仕組みがつながることで、『鋼の錬金術師』で繰り返し描かれる「何かを得るために何を犠牲にするのか」という問題にもつながっていきます。
ホムンクルスと「お父様」はどんな関係?
ラストたちホムンクルスの行動を追っていくと、彼らのさらに上に「お父様」と呼ばれる存在がいることが分かります。
ホムンクルスたちは基本的にお父様の計画に従って動いており、軍上層部やアメストリスという国そのものにも、その影響が広がっています。
そして、お父様の過去をたどることで、ホーエンハイムとの意外なつながりも明らかになります。
お父様の起源は「フラスコの中の小人」
お父様の過去は、現在のアメストリスからはるか昔のクセルクセスへさかのぼります。
そこで奴隷として生きていた青年と出会ったのが、「フラスコの中の小人」と呼ばれる存在でした。
その青年は後のヴァン・ホーエンハイムであり、フラスコの中の小人は彼に名前や知識を与えます。
その後の出来事を経て、フラスコの中の小人はホーエンハイムとよく似た姿を持つようになり、後にホムンクルスたちから「お父様」と呼ばれる存在へつながっていきます。
▶ ホーエンハイムと「フラスコの中の小人」の出会いが描かれるのは何巻・何話?
七つのホムンクルスはお父様から切り離された存在
ラストたち七つのホムンクルスは、お父様と無関係に生まれた人造人間ではありません。
作中では、お父様が自らの中にある七つの欲望や感情を切り離し、それぞれをホムンクルスとして生み出したことが語られます。
そのため、ラストたちはお父様を「父」と呼び、それぞれが色欲、暴食、嫉妬、強欲、憤怒、怠惰、傲慢を象徴しています。
興味深いのは、感情を切り離して完全な存在へ近づこうとしたお父様に対し、その子どもともいえるホムンクルスたちが非常に強い感情を見せることです。
グリードの欲望、エンヴィーの嫉妬、ラースの怒りなどは、その名前をそのまま表すかのように彼らの行動へ現れています。
ホムンクルスはお父様の計画のためアメストリスを動かしていた
ホムンクルスたちの目的は、単にエドたちと戦うことではありません。
軍内部に入り込み、各地で起きる出来事へ関与しながら、お父様が長い時間をかけて進めてきた計画を支えています。
やがてエドたちは、アメストリス各地で繰り返されてきた大規模な流血と、国の形そのものに共通点があることへ気づきます。
敵が数人のホムンクルスだけなのではなく、国そのものが巨大な計画の中に組み込まれていたと分かることで、物語の規模も大きく変わります。
▶ アメストリス国土が巨大な錬成陣だと判明するのは何巻・何話?
ホムンクルスと人間は何が違う?ラースとグリードは特殊
ホムンクルスという名前から、七人がすべて同じ方法で作られた存在のように思えるかもしれません。
しかし実際には、キング・ブラッドレイことラースや、リン・ヤオの身体を器にしたグリードなど、ほかとは成り立ちが異なる者もいます。
キング・ブラッドレイは人間をもとに作られたラース
アメストリスの大総統キング・ブラッドレイも、七つのホムンクルスの一人である「憤怒」のラースです。
ただし、ラストやエンヴィーたちとまったく同じ形で生み出されたわけではありません。
ブラッドレイはもともと人間として生まれ、後に賢者の石を入れられることでラースとなった特殊な存在です。
人間社会の頂点に立つ大総統自身がホムンクルスだったことによって、軍の内部までお父様の計画が入り込んでいたことが分かります。
▶ キング・ブラッドレイがラースだと明かされるのは何巻・何話?
グリードは一度失われた後、リンの身体を器にする
グリードも、ほかのホムンクルスとは少し違った道を歩む人物です。
最初に登場するグリードは、お父様のもとを離れ、自分自身の欲望に従って仲間たちと行動していました。
アルがグリードと出会うことで、ホムンクルスにもお父様へ従わず独自に行動する者がいることが分かります。
その後、グリードは再び生み出され、今度はシン国の皇子リン・ヤオの身体へ入ることになります。
リンは自分の目的のため、その存在を拒絶するのではなく受け入れます。その結果、一つの身体の中にリンとグリードという二つの意識が存在する特殊な関係が生まれました。
人間を見下しながら人間らしい感情を見せる者もいる
ホムンクルスたちは、人間を弱く愚かな存在として見下すことがあります。
しかし物語を最後まで追うと、彼ら自身にも人間と重なる部分が見えてきます。
ここからは一つの見方ですが、特に分かりやすいのがグリードです。
自分はすべてを欲しがる強欲な存在だと言いながら、その行動を追っていくと、本当に求めていたものが単なる富や力だけではなかったことが見えてきます。
エンヴィーにも、人間に対して強く反発する理由につながる感情があります。ブラッドレイもまた、自分に与えられた人生の中で、自ら選んだものについて語ります。
人間から感情を切り離したような存在でありながら、最後には非常に人間らしい感情を見せるところも、ホムンクルスたちの印象的な部分です。
七つの大罪はホムンクルスの生き方にどう表れている?
七人のホムンクルスは、同じお父様から生み出されながら、性格も能力も大きく異なります。
名前と行動を合わせて見ると、それぞれが七つの大罪をどのように表しているのかが分かりやすくなります。
ラスト・グラトニー・エンヴィーは欲望や感情が分かりやすい
ラストは「色欲」、グラトニーは「暴食」、エンヴィーは「嫉妬」の名を持ちます。
グラトニーは食べることへの強い欲求がそのまま行動に表れ、エンヴィーは人間を見下しながらも、人間の持つものへ激しく反応します。
特にエンヴィーは、マース・ヒューズに関わる出来事をきっかけにマスタングと直接対峙し、その感情がより強く表れることになります。
グリード・ラース・スロウスも名前通りの特徴を持つ
グリードは「強欲」の名の通り、金、力、地位などさまざまなものを欲しがります。
しかし、その欲望を突き詰めることで、彼が本当に欲しかったものが何なのかも見えてきます。
ラースは「憤怒」を背負い、普段は冷静な大総統として振る舞いながら、戦闘では圧倒的な力を見せます。
スロウスは「怠惰」を象徴し、何をするにも面倒そうにしながら、お父様の計画に必要な仕事を長い時間をかけて続けています。
同じ七つの大罪でも、名前の表れ方がそれぞれ異なるのが面白いところです。
プライドは「傲慢」を象徴する最初のホムンクルス
プライドは「傲慢」の名を持ち、人間に対して強い優越意識を見せる存在です。
普段の姿とホムンクルスとしての本性には大きな差があり、物語後半まで重要な役割を担います。
しかし終盤では、そのプライドも追い詰められ、エドとの戦いに決着がつきます。
傲慢を名乗り人間を下に見ていた存在が、最後には自分が軽視していた人間たちによって追い詰められていく流れも、七つの大罪という設定を考えるうえで印象的です。
まとめ
『鋼の錬金術師』のホムンクルスを整理すると、単なる再生能力を持った敵ではなく、物語の中心にある「お父様」の存在と深くつながっていることが分かります。
- ホムンクルスはお父様から生み出された人造人間である
- プライドからラースまで七つの大罪に対応した名前を持つ
- 身体には賢者の石が関わっており、強い再生能力を持つ
- お父様の起源はホーエンハイムと出会った「フラスコの中の小人」へつながる
- ホムンクルスたちはお父様の計画のため、アメストリスの内側で動いていた
- ブラッドレイやリンの身体を器にしたグリードなど、特殊な成り立ちを持つ者もいる
- 人間を見下す一方で、人間らしい感情を見せるホムンクルスもいる
七つの欲望や感情を切り離せば、より完全な存在になれるのか。それとも、欲望や感情を持つからこそ人は人として生きられるのか。
ホムンクルスたちを一人ずつ見ていくと、『鋼の錬金術師』が描く「人間とは何か」というテーマも、より分かりやすく見えてきます。

